特集

ぐるなび

東京都内の“おいしい”探訪記

2017.5.24

「鱧しゃぶは先代から受け継いだ味。焼いた鱧の骨を使っただしに、皮ごと身を湯引きして召し上がっていただくので、骨も身も皮もすべて味わえます」

とゝや魚新 料理長 村松喜久夫

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街の「魚屋さん」から、一つ星の割烹へ…店が歩んできた120年

シャク、シャク、シャクと、歯切れよく、硬い骨を切る包丁の音が聞こえてくる。季節を感じる味や香りは数あれど、音を聞いただけで「ああ、夏だな」と思う食材はそう多くないだろう。これは鱧の“骨切り”の音、夏の到来を感じさせる音だ。

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鱧料理が発展したのは、江戸時代のころ。内陸の京都へ運ばれる鮮魚は限られていたが、生命力の強い鱧は新鮮なまま届けることができる、数少ない魚のひとつだった。そのため、京都を中心に鱧料理の文化が広がった。今でも京都の祇園祭や大阪の天神祭に鱧料理が欠かせないのは、その歴史ゆえだ。

もちろん幸運なことに、現代は日本のどこでも夏には鱧料理が多く出され、季節を感じることができる。そんな夏の風物詩ともいえる鱧を、おいしくいただける日本料理店が東京・赤坂にもある。一ツ木通りから一本入った小道に佇む、割烹「とゝや魚新」だ。飲食店の多い道にあるが、カラリと引き戸を開けて入ると、老舗らしい静かで落ち着いた空間が広がる。

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「とゝや魚新」はその名の通り、鮮魚を使った日本料理が中心の店だ。なぜ魚なのか。その理由は、この店のユニークな成り立ちにある。

明治23年、赤坂に“お魚屋さん”として「魚新」は開業した。現在の店名に残る「とゝや」とは、魚屋時代の屋号で「とゝ」は魚の意味である。昭和に入り、赤坂の花柳界がますます発展していったことから、昭和10年に鮮魚販売に加えて、花柳界の料亭やお茶屋への料理の仕出しを開始。それが好評を博し、三代目が後を継いだ昭和45年には仕出し・出張料理に専念するようになったという。そして、昭和55年に六本木(現在は日本橋と西麻布)に「天ぷら魚新」を、続いて昭和57年に赤坂に割烹「とゝや魚新」を開店した。

今でも、カウンターの奥には、鮮魚店のころに使用されていた扁額が掲げられ、120年を超える歴史の重みを感じさせる。当時から築き上げた、築地の魚河岸との信頼関係は今も変わらない。だからこそ、魚料理へのこだわりを貫くことができる。

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