特集

ぐるなび

わざわざ出かけたい国内グルメ旅

2017.10.25

「お客様に佐賀市に来てよかったと思ってもらえる、そんな店を目指しています」

多門 店主 田中 健氏

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昨年、生誕400年を迎えた有田焼をはじめ、唐津や伊万里といった焼き物の名産地として知られる佐賀。近年、SNSでの発信により、うつわブームが加速しており、毎年GWに開催されている「有田陶器市」では全国から約100万人が訪れるほどの大盛況ぶり。さらに農林水産省による「日本の棚田百選」に選ばれた6地区の棚田や、虹の松原といった美しい自然、北は玄界灘、南は有明海と海・山の食材にも恵まれ、「観る・買う・食べる」が満足できる場所として、旅好きたちの注目のエリアとなっている。「佐賀県に人が訪れてくれるのはうれしいのですが、有田や唐津だけでなく、佐賀市内でも満喫してもらえればうれしいですね」。そう語るのは、佐賀市内にある一つ星の鮨「鮨 多門」の田中 健氏。

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旅の玄関口でありながら、他のエリアへの通過地点となることが多く、観光客に魅力を伝えきれていないという佐賀市(佐賀市観光振興戦略プランより)。文化は少ないかもしれないが、“食文化”で観光客を楽しませたい。というのが田中氏の思いであり、自らの役割の一つだと考えている。田中氏が佐賀市内で腕をふるう「多門」は、『ミシュランガイド福岡・佐賀2014 特別版』で一つ星に輝いた鮨店。ネタ箱には調理を待つとびきりの天然物が並び、美しい檜のL字風カウンターが客を出迎える。2010年に店をオープンし、3年前に現在の場所へ移転。佐賀駅前に支店を持つ、県内屈指の人気店だ。

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この「多門」の鮨を食べたくて、県外から訪れる客も少なくないという。その理由のひとつは、おまかせコースの満足度の高さ。使うネタは九州近海を中心に、信頼を置いた仲買から仕入れた旬の魚介類。九州の北西部には、世界有数の漁場として知られる玄界灘があり、特に佐賀や長崎の上質な鮮魚が水揚げされる。五島のハガツオや対馬のサバ、唐津のアカウニなど、玄界灘の豪華な顔ぶれが目の前に次々と登場するのだ。そして何より、この舞台で繰り広げられる田中氏の所作と接客が清々しく、客を心から楽しませてくれている。

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一品料理にも力を入れており、田中氏が日本料理の修業時代に培った技術による、割烹料理店顔負けの新鮮な味わいが見事だ。それらがおまかせコース8,000円(税別、以下同)からいただけるというのだから驚きだ。特にコストパフォーマンスが高い、おまかせコース10,000円(小鉢3品、焼き物、蒸し物や椀物、握りが8~9貫※仕入れにより変動)に登場したメニューを紹介する。

まずは小鉢「子ふぐの昆布〆」(写真下)から。昆布締めした島原産トラフグの子どもをポン酢でいただく。プリッとした食感のフグはかみ締めるほどにコクが広がり、昆布の香りが鼻へと抜ける。

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続いて愛知県産「メヒカリの一夜干し」(写真下)。メヒカリはヒメ目の海魚で、体長は約10~15センチメートルの小魚。柔らかい、脂ののった白身はほんのり甘く、うまみにも満ちている。表面にオリーヴオイルをまぶして焼くことで、パリッとした食感も楽しめ、日本酒でちびちびといただきたくなる一品だ。

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こちらは対馬産「ノドグロのづけ焼」(写真下)。隣県である長崎・対馬は、リアス式海岸の地形が波の穏やかなゆりかごとなり、豊富なプランクトンが栄養価の高い多くの魚を育んでいる。藁で皮目を炙っており、燻製のような風味がアクセント。濃厚でしっとりとしたうまみが口の中にじゅわっと広がる。わざと粗めに作られた自家製柚子コショウと一緒にいただくと、脂ののったノドグロをまろやかに引き立ててくれる。

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焼き物は「マナガツオの酒粕焼」(写真下)。有明のマナガツオに新物の銀杏が添えられている(取材時は9月中旬)。関東でこそ知名度は低いがマナガツオは西日本を代表する高級魚。上品な白身は身がしまっており、繊細な甘みだけでなく脂もしっかりのっている。ひと口目は酒粕の香を楽しみ、ふた口目はすだちをかけてさっぱりといただくのがおすすめ。

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「多門」は日本酒も地酒にこだわっており佐賀のものを4種、その他九州のものを中心にそろえている。メニューにのってないものも多く、客の好みや料理にあわせて提案しているそうだ。「佐賀に来られて、佐賀を楽しんでもらうためには、日本酒も魅力のひとつです。料理との相性でさらに食の満足度を高めたい」と田中氏。握りの前に、手のこんだ一品料理でついつい酒が進んでしまう。つまみの満足度の高さに、これから供される寿司に期待が膨らまないはずはない。

九州の旬の味を愉しめる端正な握りに心躍る

「多門」の寿司はまず、ごはんがおいしい。米には一番力を入れており、食べたときに口の中で解けるよう、少し硬めにたきあげている。使用している佐賀県産「ヒノヒカリ」は、山手の棚田で作っている農家からの直送。ほのかな甘みがあり、見た目にも粒のそろった美しさが特徴だ。酢飯には3種の赤酢と米酢を使用しており、江戸前でありながらも地元の人に愛されるようにと、絶妙な塩梅の甘みもプラス。どのネタにもあうよう主張しすぎない、でも“負けない酢飯”が「多門」の立役者である。

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まずは五島産アラ(別名:クエ、写真上)は玄界灘の冬を代表する魚。海底の岩礁でじっと過ごすため捕るのが非常に難しく、“幻の魚”とも言われるほどだ。一週間塩のみで寝かしており、うまみが強く、弾力のある食感。

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玄界灘で水揚げされたヤリイカ(写真上)には、柚子の皮をまぶしていただく。細かな切込みがていねいに入れられており、表面からあふれ出す甘みがすごい。味を決める「手当て」と呼ばれる職人技にこだわっているのも「多門」が食通たちにに愛されている理由のひとつだ。

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見た目にも美しいサヨリ(写真上)は天草産。サヨリは光物を代表する高級魚。淡白な白身に昆布のだしがしみ込み、繊細かつ上品な味わいに思わず顔がほころぶ。少しすだちをしぼっていただくと、さらにうまみが昇華する。

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唐津の赤ウニ(写真上)は濃厚なうまみと甘みが口の中でひとつになる、口福の一貫。ほのかに広がる磯の香りや、舌の上でとろける食感がたまらない。飲み込むのをいつまでもためらってしまうほど。

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握りの最後にでてくるのが一見オーソドックスな卵焼き。エビと山芋が入っており、口に入れたときのふわふわ食感に驚く。田中氏が勉強のために訪れた、他の鮨店の卵焼きに衝撃をうけ、さらに改良を加えて完成させたのだという。甘すぎず、上品なデザートのような一品。

そして、最後にふれておきたいのが「多門」の舞台だ。コンクリート打ちっぱなしのビルの入り口に立ったときに、“本当にここで合ってる?”と一瞬不安を覚えるかもしれない。門からのアプローチ、調度品や器にもこだわったセンスあふれる空間は、一見鮨屋とは思えないほどスタイリッシュ。だが、決して華美ではなく、洗練されていながらも居心地の良さが圧倒的に勝るのだから、不思議である。物腰が柔らかく、人柄の良い店主・田中氏が醸しだす魅力ゆえなのかもしれない。

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現在は満席の日も多く、地元の人にも愛されている「多門」。実はこれまで、あまり取材などを受けてこなかったそうだ。「メディアによる一過性なもので、常連のお客様に迷惑がかかるのも避けたかったもので。でも、県外からわざわざ来てくださることはとてもうれしいんです。それなら佐賀市の食文化のひとつとして“佐賀市に来てよかった”と思われるような魅力的な店にしたいなと。また佐賀市に戻ってきてもらえるよう、日々努力するしかないですね」と田中氏は謙虚に笑う。

食事を目当てにわざわざ飛行機や新幹線にのって出かけたくなる店、というのはそう多くはない。だが、一度足を運ぶと「多門」の満足度の高さに、再訪を心に決めるだろう。こんな店が近くにあったらと、常連になりたいと思わせられる店。そんな店に出逢えること自体が幸せなのだと、感じずにはいられなくなるはずだ。


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2017年10月25日(水)掲載の「【佐賀】驚くほど高い満足度。極上のネタと感性に舌が唸る」をお読みいただいた読者さま限定に日本初の磁器として401年目を迎える新しい有田焼「1616/arita japan」3枚セット(5,000円相当)を、抽選で3名様にプレゼントいたします。「1616/arita japan」は有田焼のイメージとは全く異なる、磁器本来の白さとシンプルでモダンなデザインを追求した有田焼のブランド。サイズ違いの3枚セットを3名にプレゼントいたします。応募要項をご確認の上、ふるってご応募ください。

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撮影・取材/クラブミシュラン 岡久加苗(ぐるなび)

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