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ぐるなび

わざわざ出かけたい国内グルメ旅

2018.4.25

「火入れが命。素材を生かす料理を心がけています」

中国菜エスサワダ オーナーシェフ 澤田州平

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一皿ごとにわくわくさせられるドラマティックな中国料理

2017年11月、『ミシュランガイド京都・大阪 2018』が発売、12月には『ミシュランガイド東京 2018』が発売となった。そこで今週から、それらに新しく登場した店を紹介していく。1軒目は、オープン1年目から一つ星として掲載された「中国菜エスサワダ」。

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オーナーシェフである澤田州平氏は香港を拠点に中国・日本に店を構える、香港の中国料理店「福臨門」をはじめ、「グランド ハイアット 東京」など香港や東京でキャリアを積み、心斎橋「中国料理旬菜サワダ」(現・「中国料理旬菜 森本」)の料理長を経て2016年11月に独立した。

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昼は「飲茶ランチ」1,180円(税込・以下同)や「本日のランチ」1,080円など、手軽なセットを。夜は旬の食材を活かしたコース料理が中心だ。夜はアラカルトもあるが、コースではアラカルトにはない旬の特選素材を使った料理が登場するためこちらも魅力的だ。実際に、夜は客の8割がコースをオーダーしているという。(コースは8,000円から。前日までの要予約)

この日のスペシャリテは、栃木県産香鶏のクリスピーチキン。中華鍋で油を回しかけて皮をパリパリに焼き上げるクリスピーチキンは、香港ではポピュラーな料理だ。澤田氏が香港での修業時代に習得した思い出の一品でもある。内臓を抜いた鶏に、五香粉や塩、ショウガをすりこんだ後、表面をパリッと仕上げるために熱湯をかけ、さらに麦芽糖や酢で作ったタレを塗り6時間乾かすという、下処理に時間と手間を要する一品だ。

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本場香港ではここで中華鍋の出番となるが、澤田氏はその前にスチームオーブンでじっくり低温調理する。そうすることで身がぱさつかず、しっとりジューシーさが増している。中華鍋で油を回しかける際は、最初から高温の油をかけると気泡ができてしまうため、低温からじっくりと温度を上げていく。

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真っ白だった皮が次第にこんがり色付き、出来上がりはムラのない均一な黄金色に。まずはカットする前にテーブルで披露。

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頭と共に鶏一羽まるごと皿に盛られた姿は迫力満点だ。頭部分は、その見た目から敬遠されがちだが、トサカや皮もパリパリしていて香ばしく、とろりとした脳みそも是非味わって欲しい。身の部分はほのかに五香粉が香るシンプルな味付けである。香ばしい皮とジューシーな身のコントラストも効いていて、鶏のうまみを様々な方法で味わえる。さらに、最後まで飽きずに食べられるようにと、計5種類もの薬味が用意されている。

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乾燥させて粉末にしたセロリ、山椒、五香粉をブレンドした自家製塩3種と自家製チリソース、そしてライチの香りを移した酢を好みで合わせる。毎回2人で一羽を完食するリピーターもいるほど人気の一品だ。

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コースにも必ず登場し、単品でもオーダーできる。「クリスピーチキン」(単品の場合、半羽3,680円、1羽6,980円)

鶏を丸ごと一羽供するクリスピーチキンをはじめ、テーブルが華やぐ盛り付けも澤田氏の得意とするところ。「毛ガニの炒飯」には毛ガニの甲羅を飾り、ダイナミックに演出している。炒飯をよく見ると、ごはんの量と同じくらいカニ身がたっぷり入っている。「炒めるときにカニの味噌を加えることで、コクと香りが引き立ち、より濃厚な味わいになります。」と澤田氏。ふっくら炊きあがる日本米の特徴を活かすため、パラパラよりもふわふわを目指し、ごはんの甘みもしっかり感じられるようにしているのだそう。この日はアスパラガスも使い、ふっくら食感にいいアクセントを添えている。

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「毛ガニの炒飯」(写真は2~3人分。10,000円以上のコースで提供)

さらに、高級食材の大胆な使い方もテーブルを盛り上げてくれる一因だ。広東料理の人気料理、「フカヒレの姿煮」は、澄み切った上湯スープに上海蟹の身を2杯分ほぐし入れソースにする。ソースにまで濃厚な上海蟹のうまみがフカヒレに染みている一品だ。

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「フカヒレの姿煮・上海蟹のソース」(15,000円のコースより)

「ひと昔前は日本で中国料理と言えば、脂っこさばかり目立ったり、濃いソースで味付けをするため材料の質は二の次になっていたこともありました。ヘタしたらうまみ調味料を多用しているなんてことも。中国料理の地位自体もフランス料理や日本料理よりも低く見られていて、私自身もちょっと引け目に感じていたこともありました。でも私が香港時代に体感した中国料理は高級食材を使い、きちんと素材を生かす料理。そのため私も素材ありきで料理を作ることを心がけています」と、澤田氏。

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長崎から届く魚介をはじめ、その時期に旬の食材を全国から仕入れ、本場香港にはない日本ならではの食材も積極的に取り入れている。例えば、日本料理では鍋に仕立てられることが多いクエは、季節野菜と共に炒めて出すことが多い。クエは卵白と片栗粉でコーティングしてから炒めることで表面はサクッと、皮と身の間のゼラチン質はぷるんっと仕上がり、鍋とはまったく違う食感と味わいが楽しめる。また、素材を生かすために澤田氏が最も大切にしているのが火入れだ。和牛のシャトーブリアンは炭火で焼き、余分な油を落としてからブラックビーンズソースと合わせるなど、強火で一気に仕上げる中国料理の調理法だけでなく、時には日本料理やフランス料理の繊細な技法も取り入れ、素材のおいしさを追求している。

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香港で学んだフカヒレ餃子やスープたっぷりの小籠包もあれば、タラの白子入り麻婆豆腐や、花山椒を効かせたソースが決め手のよだれ鶏など、ひと技効いた料理も多い。現代と古典を融合させ、見た目も華やかな本格中国料理には、一品ごとにわくわくさせられる。季節を変えてまた訪れたくなる店だ。

※2017年11月取材 (メニュー・価格は取材時の内容となります)

取材・文/ 天野準子 撮影/平賀 元 

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