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ぐるなび

東京都内の“おいしい”探訪記

2019.3.20

「おにぎりのイメージは、あくまで家庭の味の延長。奇をてらうなど、高価な具材でその安心感を裏切るわけにいきません」

おにぎり 浅草 宿六 三浦洋介

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昭和29年に創業した東京 浅草にあるおにぎり屋「おにぎり 浅草 宿六」が、昨年末『ミシュランガイド東京 2019』に、「ビブグルマン」(価格以上の満足感が得られる料理。良質な食材で丁寧に仕上げており、5,000円以下で楽しめる。)として掲載され大きな話題となった。「幼い頃から、創業者である祖母が作るおいしいおにぎりを食べて育ったので、いわば“おにぎりの英才教育”。その記憶をもとに、自分がうまいと思うものを日々追求しています」こう話すのは、三代目として店を受け継いだ三浦洋介氏。

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浅草観音裏に構える同店では、『ミシュランガイド東京 2019』が発表された2018年11月以降、営業時間前から長蛇の列が途切れない。現在、昼の時間帯(11:30から)は三浦氏が、夜の時間帯(18:00から)はお母さんが、それぞれ1人で料理から接客までを切り盛りするが、やはり多くの人が「おにぎりを食べたい」と混雑するのは昼。三浦氏曰く「1個握るのに約1分かかるため、30個なら約30分」、さらに味噌汁を出し会計をする。その日に何人の客を対応できるかを見込めるため、入店目安の時間を伝えているが、行列の長い日には、営業時間前に売り切れが確定することもあるという。(ご飯がなくなり次第営業終了)

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「お客様の数は、昨年の掲載前と比べると約4倍に増えたように感じます。“おにぎりがミシュランガイドに選ばれた”という意外性が注目を集めた理由だと思うのですが、話題になることは決して悪いことではないですし、もっと正直に言えば、ミシュランガイドに掲載された喜びよりも、それによっておにぎりの知名度が上がることのほうが嬉しかったです」と話す三浦氏。

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これまでも、大手コンビニの商品開発担当者が情報交換をしに来たり、おにぎり屋を開業する人たちがヒントを得るために訪れるという、まさにおにぎりのパイオニアとしても知られていた同店。三浦氏は、日本のおにぎりという文化を世界へ広めるため、2015年のイタリア・ミラノで開催された食の祭典『ミラノ国際博覧会』(ミラノ万博)にも参加した経験を持つ。

「おにぎり協会(「一般社団法人おにぎり協会」)から誘っていただいたのがきっかけですが、ミラノでの反応はとても良かったです。イタリアならではのおにぎりにも挑戦してみようと、赤ワインで米を炊いたり、チーズを混ぜたり、生ハムで巻いたりもしましたが、結果は、しぐれ煮など日本の具材の方が外国人へも好評でしたね」

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海苔・米・具というシンプルな三味で構成されるゆえ、素材に対するこだわりが物を言う、おにぎり。毎年、三浦氏自身が米の出来を味見して、一番おいしいと思う単一原料(産地、品種、生産年度が全て同一)の米を採用しているそう。

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ご飯と具を型に入れ、サイズと形を調整する。そして、手のひらに塩をまぶし、具材の種類やその日のご飯の状態に合わせてバランスよく手で握る

「今は新潟県産のコシヒカリを使っていますが、米の銘柄が同じでも味にバラつきがあるため、毎年、自分の舌で各産地の米を食べ比べています。コシヒカリは一般的に味や香りが強いので、海苔の香りや具材の味に負けず、かといってそれぞれの味を邪魔しない。おにぎりにしたときに、海苔・米・具のバランスがちょうど整う素材を選ぶことを意識しています」

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ランチはおにぎり2個690円(税込み、以下同)から、3個930円からで、ともに豆腐味噌汁・沢庵付き。(290円以上のおにぎりは差額分を支払えば組み合わせ可能)

また、羽釜で炊き上げるスタイルだけでなく、東京湾産の江戸前海苔や、具材のラインナップに至るまで、初代から受け継がれたスタイルは健在だそう。ショーケースに並ぶ具材は、購入先が店をたたんでしまったところ以外、初代から同じ仕入先のものを使用する。

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写真は「さけ」 1個300円

具材の種類は常時17種類前後。日本人にも外国人にも「さけ」が一番人気だ。鮭は北海道産を使用し、ほぐしきる前のたっぷりとした切り身のボリューム感も味わうことができ、一番人気というのも納得だ。

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「たらこ」 1個330円

タラコも北海道産を使用する。昼間の三浦氏の時間帯には生タラコ、夜のお母さんの時間帯は焼きタラコを握っているそうで、それぞれ握り手のこだわりが楽しめる。

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「梅干」 1個300円

紀州から取り寄せているという梅干しは、米に合う優しい酸味と塩味が特徴。夜を担当するお母さん曰く「食べやすい梅干しなので、梅干しが苦手な方も、うちのおにぎりで食べられるようになったというお客様もいますよ」

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「塩紫漬」1個280円

他にも、紫蘇の葉と実がさわやかに香る「塩紫漬」や、「しらす」、「山ごぼう」など、定番に加えて変わり種を握ったおにぎりも人気が高い。

壁に掲げられた木札の先頭に、「上種吟味」を冠する通り、海苔・米・具のすべての種を吟味し、そのバランスを見極める「おにぎり 浅草 宿六」。その大半が280円からという、ミシュランガイドの中でも低価格かつ短時間で提供される、日本を代表するソウルフード“おにぎり”に、今後も注目が集まりそうだ。

取材・文/藤井存希、撮影/佐々木雅久

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