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ぐるなび

わざわざ出かけたい国内グルメ旅

2019.6.6

「帰る際には、おいしかった。そして楽しかったと言ってほしい」

祇園 さゝ木 店主 佐々木浩

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2018年10月、『ミシュランガイド京都・大阪+鳥取 2019』のセレクションが発表され、京都では、22軒が二つ星として掲載された。今回は、京都・大阪の初刊である『ミシュランガイド京都・大阪 2010』(2009年発刊)以来、10年にわたり二つ星に掲載される京都の割烹「祇園 さゝ木」をご紹介する。

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店主 佐々木浩氏が独立して祇園に店を出したのは1998年。最初はわずか8坪5席の小さな店から始まり、その後2度の移転を経て、現在は、八坂通に立つ100坪の一軒家に店を構えている。店が大きくなった今も「一人ひとりのお客さまに楽しんでもらいたい」という姿勢は変わらず、連日の満席が続いている。

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昼は12時、夜は18時半からの全席一斉スタート。コースはおまかせのみで、料金の目安は昼が8,000円(税・サービス込、以下同)、夜は24,000円(当日仕入れる食材によって料金が異なる場合がある)

“佐々木劇場”と称される盛り上がるカウンター

一斉スタートのカウンター割烹は今でこそ珍しくないが、「祇園さゝ木」はその先駆け的存在だ。「例えば、ローストビーフは塊で焼く方がおいしいですよね。でも予約の時間がバラバラだと、できたてをお出しできないお客さまも出てきます。料理を一番おいしいベストな状態で出したいと思ったら、一斉スタートしかなかったんです」と、佐々木氏。

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コースが始まれば、カウンターに座る17人の客たちが、ダイナミックに料理を仕上げる佐々木氏の一挙手一投足に釘付けとなり、軽妙洒脱なトークに引き込まれていく。さらに、にぎりや手巻きは皿にのせず、佐々木氏から客の一人ひとりへ個別に手渡すなどパフォーマンスも楽しく、カウンターは一斉スタートだからこそ生まれる一体感に包まれる。

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素材合わせや調理法も斬新。味の想像が膨らむ

食材選びに常に貪欲な佐々木氏。京都市中央卸売市場へ行くのは毎朝の日課であり、気になる食材があれば、遠方まで出かけ、新しい食材も積極的に料理に取り入れている。最近では、宮崎県で国産キャビアを研究開発する会社と、和のキャビアを監修し3年の月日をかけて完成させた。

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和のキャビアとは、宮崎県で育てられたチョウザメの卵を昆布と共に90日間熟成させたもので、昆布に含まれているグルタミン酸とキャビアのイノシン酸の相乗効果でうまみも濃厚。和食との相性もよく、6月の先付では、玉子のムースと雲丹に合わせて出されている。

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佐々木氏の手にかかれば、お馴染みの料理もワクワクさせる一品に変わる。6月に出されるしゃぶしゃぶは、トマト、アスパラなどの夏野菜がぐつぐつと沸き立つ鍋に、厚切りのローストビーフをのせて供される。

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「薄切り肉だと、肉を食べたという満足感が出にくいと思います。これなら食べ応えもあるし、暑い夏を乗り切るのにいいんです」。また、冬のコースでは、フグの白子をバターで焼き、トリュフをかけて出すことも。奇をてらったように思うトリュフとフグの組み合わせも、バターが二つの素材のつなぎ役となり調和を生むのだそう。

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「日本料理の華は椀物です」と、佐々木氏。6月は『牡丹鱧』。骨切りし、葛を打ったハモを出汁に数秒くぐらせると、牡丹の花のように身が開く

「先人たちが考えた料理はやっぱりうまい。でも、もっとおいしくならないか、オリジナリティを出せないかを日々、考えています」。京都の冬の醍醐味、かぶら蒸しに関しても試行錯誤を繰り返し、自分らしく革新できないかを模索してきた。しかし、先人たちの考えた正統なスタイル以上のものが作れず、一度はさじを投げそうになったとか。そして、昨年ついに納得いくものが完成。

「通常、かぶら蒸しはかぶをおろして甘鯛の上にかけて蒸すんですが、うちでは、おろしたかぶに葛を入れ、鍋で練ってかぶのあんを作るんです。これがねっちりとした食感でおいしいんです。それに、従来のやり方だとかぶに火を入れようと思うと中の甘鯛に火が入りすぎてしまうなど、火入れが難しかったのが、甘鯛を単独で蒸すことで、かぶも甘鯛も完璧な火入れで出すことができるようになりました」

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カウンター内のオープンキッチンの中央には、日本料理店には珍しい薪窯が設置され、コースには薪窯で焼いた料理が登場することもある。薪窯は700℃にまで上がり、遠赤外線効果も炭火より高く、カニやアワビもうまみを逃さず一気に焼き上げることができる。「これまでもあらゆる食材を試してきましたが、薪窯は何を焼いてもおいしくなるんです」

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「おいしいものを作ることに努力を惜しみません。でも、せっかくおいしいものを提供しても、食事をする時、楽しくないとおいしさが伝わらないと思います。店に来る前にケンカしていたご夫婦も帰る時にはにこやかになってほしいですしね」と、茶目っ気たっぷりに笑う佐々木氏。

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カウンター席のほかテーブル席、個室を利用できる。1階奥のテーブル席は最大8名、2階の個室は座敷になっており最大6名までで利用できる(個室利用料なし)

斬新な素材合わせやオリジナリティ溢れる調理法、さらにカウンターでのパフォーマンスもすべては客に楽しんでほしいという想いから。訪れた人が帰る頃には元気になり、また来店したいと思わせる。これまで21年間、絶えず満席なのも納得だ。

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取材・文/天野 準子、撮影/福森 クニヒロ

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