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ぐるなび

わざわざ出かけたい国内グルメ旅

2020.12.7

「店を始めて38年。“中国料理とは何か”を、日々、自問自答しています」

京、静華 オーナーシェフ 宮本静夫

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2020年10月、『ミシュランガイド京都・大阪+岡山 2021』のセレクションが発表された。その中で新たに一つ星として掲載された中国料理の「京、静華」をご紹介する。

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宮本静夫氏が「京、静華」をオープンしたのは2008年。それ以前は、浜松で25年にわたり「静華」という中国料理店を営んでいた。その間も、台湾や香港などのホテルや料理店で学ぶ機会を積極的にもうけてきたが、55歳の時、一旦店を閉じることを決意。当時すでにかなりのキャリアを積んでいた宮本氏だが、北京の料理学校で1年間、中国料理を学んだ。

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「初心に戻りたかったんです。若い生徒さんと一緒に、包丁の使い方など、いろはの“い”から習いました。25年も店をやっていたので、ある程度のことはできていましたが、”できていないこと”を痛感するいい機会になりました」

そして帰国後、宮本氏が新天地に選んだのは慣れ親しんだ浜松ではなく、京都だった。「北京は、伝統的な文化が残っていて京都と似ていると感じました。浜松時代から京都は好きで、食べ歩きにもよく来ていたこともあり、この地に店を開くことにしました」

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「鮮魚の刺身」

四川や北京など、さまざまな料理を現地で学び、古典的なレシピの再現に取り込むこともあれば、中国料理の最新事情にもアンテナを張り、フレンチやスパニッシュの料理に触発されることもあったという。そんな宮本氏の作る料理は独創性に富んでいる。

一見するとフレンチのように繊細で美しい料理も多く、コースに必ず出される前菜の「鮮魚の刺身」もその一つだ。

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中国料理の中で、刺身は大皿でダイナミックに盛られることが多いが、こちらではパフェ仕立てに。この日の鮮魚は鯛。鯛の刺身に細かく刻んだ野菜をのせ、ナッツや穂紫蘇、エディブルフラワーを散りばめる。すだち、塩、オリーブオイルで作ったドレッシングでさっぱりいただく。「京都は昔から、明石から運ばれるいい鯛が手に入るので、シンプルにいただくのが一番です」と宮本氏が話す。

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「フカヒレの上湯スープ」

宮本氏の料理は、独自のセンスを感じさせつつも、奇をてらったものではなくシンプルに、心身ともに染み渡るおいしさだ。「フカヒレの上湯スープ」はその極み。上湯スープは、丸鶏、豚すね肉、手羽先から1日かけて基本のスープをとり、さらに、丸鶏、豚すね肉、鴨のもも肉、金華ハム、手羽先を新たに投入。そして、もう一度火入れをするという二段階仕込みでうまみを増す。仕上げは、ささみを丁寧にたたいて作ったミンチを加え、火をゆっくり入れることで余分な脂やアクを浮かせ、丁寧に上澄みを取り除いていく。スープ自体は澄んでいてあっさり見えるが、口にすると厚みのある力強い味に驚かされる。

上湯スープに合わせるフカヒレは、繊維を一本一本ほぐした金糸状に。ハンマーヘッドシャークの胸びれは、繊維が太く、濃く、短く、金糸で食べるのに適していて、繊維1本1本に上湯スープが染みている。定番の中国料理ながら、記憶に残る味と食感だ。

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昨年、京都で店を始めて10年を迎えたのを機に店内をリニューアル。以前はテーブル席と個室という造りであったが、オープンキッチンのカウンター10席に改装した。

高火力な中華レンジがカウンターの目の前に配され、香りや音、温度もダイレクトに伝わってくる。「火口が二口あるので、片方で具材を揚げて、もう片方でソースを作り、最後はさっと炒め合わせる。炒め物なら1分半で調理し提供します。このライブ感はこのキッチンだからこそ味わえるものかもしれません」

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「伊勢海老、チリソースのシャーベット添え」も二つのコンロを巧みに使い、短時間で仕上げる一皿。殻付きの身を45秒揚げている間に、海老のソースと唐辛子オイルを炒め合わせ、最後に揚がった身を投入、高温で一気にからめる。仕上げに蒸した味噌をかけて提供する。

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「伊勢海老、チリソースのシャーベット添え」

味噌がソース代わりに身と絡み、海老の濃厚なうまみが押し寄せる。最後に唐辛子オイルの辛味がふわりと漂い、後味もすっきりキレがいい。さらに、海老の頭や豆板醤、トマトを煮込んで作る海老のチリソースをシャーベット仕立てにして添えられ、熱・冷を交互にいただくのもまた一興だ。

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浜松で店を始めてから38年。遠方から通う常連客も多く、名実ともに京都を代表する中国料理店の一つである「京、静華」。「中国料理とは何か」、「今、自分ができる料理とは何か」と、常に自問自答しているという宮本氏は、現在69歳。その探究心は尽きることがない。日々、進化する「京、静華」の料理から目が離せない。

取材・文/天野準子、撮影/ハリー中西

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